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「そう」
美晴は短く呟いた。
「じゃあ今から家を出て、こっちに来るかもしれないね?」
「………来ないよ!」
思わず声を荒げてしまった。
「日記見たじゃん!沙弓がどんな子か、わかってるでしょ!?来るわけないよ。あの子は自分の幸せが1番なんだから」
美晴はあたしの目をじっと見た後、墓石に向き直った。
「いいよ、里紗たちは帰っても。あたしは1人でもあの子を待つ」
「なんで………!」
差し出した傘も受け取らず、美晴は雨に身体を晒し続けた。
「来るよ。命日だもん。あの子にとって、たかちゃんは大事な人だったはず」
「大事な人だったなら、裏切ったりなんかしない!」
あたしは叫んだ。
その頃、あたしたちが知っているのは森くんの日記の情報だけだった。
沙弓は最低最悪のウソツキでしかなく、あの子の事情も想いも知らなかった。………知ろうともしなかった。
携帯は鳴り続けている。時刻を確認すると、もうすぐ4時。
閉園時間は4時半だったから、あと30分。
雨も降ってるし、美晴を1人にしてはおけない。あたしは唇を噛み締めて、美晴の頭上に降り注ぐ雨を、透明な傘で遮断した。
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