突然の別れ

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  『もう、あんたとは付き合ってらんないっ!』     ある日突然、付き合ってもうすぐ1年になる彼女から言われた。     『なんでだよ……』   そう聞いた俺に、彼女のアズサが口ごもる。     『なんだよっ! ちゃんと理由を言えよ。俺の何が嫌なんだよ。なんで付き合ってられんのよ』   『だって……』   『だってなんだよ』   『…………くさい』   『はぁ?』   『だからっ、線香臭いんだってばっ!』     (何言ってんの?)   一瞬「ジジくさい」って言われたかと思ったけど違った。   線香臭いって……。   なーんだ、そんな事か。     『当たり前じゃん、俺、葬儀屋で働いてんだから』   そう笑う俺にアズサは、黙ったままこちらを見ていた。     『俺は線香の匂いって好き』   『アタシは嫌い』   『なんで? 線香の匂いっていいじゃん』   『いくないよ。なんか、あんたと居ると、いつも仏壇の前でデートしてる気分になる』     仏壇……。     いいじゃんか。  
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