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悲しみに染まった声で、男性は静かに少年に問い掛ける。
まるで生物の気配がしないその空間に、彼の声はよく響き渡る。
しかも、それは聞くものを虜にするような優しく澄んだ声でもあった。
その声に抗うように少年の眼はより鋭く殺気だった物に変わっていく。
「何がだ!?テメェラが“こんなこと”をしなければいいんだろうが!!
何ぬかしてやがんだよお前はぁ!!」
それは獣じみた力強い咆哮で、大気すらも震わせるような巨大な振動。
少年は間違いなく苛立っていた、その理由が“彼”に分からなかったが、何故か少年の怒りが分かるような気がしてなら無い。
予想通りと言うのだろうか、悲しげな顔をしたまま溜め息を吐く男性。
「そんなことを言っているのはもう君だけだ、後の皆は賛成してくれている…
それしか、僕らも“あちら”も助かる術はないのだから…」
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