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ギリッと、歯軋りした音が響く。
少年は分かっているのだろう、その事が何なのか全く分からないが、それしか方法が無いことが。
だから言い返せない、それがどれだけ危険なのか分かっていても。
「君の言い分は分かる、これは賭け、しかし賭けるだけの価値のある賭け、だから実行する。
全ては……いや、言うのはよそう。」
それだけ言うと唐突に男性の姿が消え、少年は慌てその場から飛び退くが遅かった。
ドスッと何か柔らかいものを殴ったような鈍い音が響く。
「ガッ…」
短く声を溢すと同時に崩れ落ちる少年、それと同時に世界が急に暗くなり始める。
そこで“彼”は思い出した。
(ああ、そうか――)
同時に段々と重くなる瞼。
時間が来たのだ、“この世界”の“終わり”が――
(あいつは――)
“その事”を完全に思い出した瞬間、“彼”の瞼は完全に閉じられた。
その時、男性が少年に言ったのだろう、しかしそれはまるで“彼”にも言っているような気がした。
「ゆっくりお休み■■、また会うその日まで、全てを忘れて――」
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