ESCAPE 1

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「泊まるって…。なんでですか?」 僕は訊いた。 私服に着替えてるって 事は、美鶴さんはもう 仕事中では無い筈だ。 つまり僕とは、何の関係 も無い。顔見知り程度だ。 「なんでって。夏樹君は今日目覚めたばかりよ?誰かお世話しないといけないじゃない。でもこの病院はあいにく人手不足。だから私が24時間体制で君のお世話をする訳」 でも。 そう言いかけた僕の 口を人差し指で塞ぎ 美鶴さんは笑顔を見せた。 「大丈夫。一応労基があるから書類上は休みで私服だけど、夜勤手当てが貰えるから。それに私だって少しは眠るわよ?用事があったら起こしてくれればいいからね」 美鶴さんはそう言って 上着を脱いだ。 「じゃ、失礼しま~す」 そしてあろうことか。 そのまま美鶴さんは 僕のベッドの、僕の隣に 横になった。 「うぇっ!?美鶴さん!?」 「私一度寝ると起きないからね~。夏樹君も体動かないから私を起こすの大変だから。こうしとけば少し強く体を揺さぶれば目覚めるでしょ?」 動かない体をわたわたと 揺らす僕の腕に絡みつき ながら、美鶴さんは携帯を 操作し始めた。 「じゃ、取り敢えず寝ましょう。12時にアラームかけるから、それまでに何か用事があったら起こしてね」 携帯を傍らに置き 美鶴さんは目を瞑った。 「えぇ~…?」 ほどなくして聞こえ始めた 美鶴さんの規則正しい寝息 を聞きながら、僕は溜め息を 洩らす。 現在時刻は20時。 つまり、あと4時間はこの 幸せなのか不幸なのか 分からない状況の中に 居ないとならないと言う事か。 寝ようにも、なんか 美鶴さんの柔らかい 感触とか甘い匂いとかに 緊張して、眠気が襲って 来ない。
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