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「泊まるって…。なんでですか?」
僕は訊いた。
私服に着替えてるって
事は、美鶴さんはもう
仕事中では無い筈だ。
つまり僕とは、何の関係
も無い。顔見知り程度だ。
「なんでって。夏樹君は今日目覚めたばかりよ?誰かお世話しないといけないじゃない。でもこの病院はあいにく人手不足。だから私が24時間体制で君のお世話をする訳」
でも。
そう言いかけた僕の
口を人差し指で塞ぎ
美鶴さんは笑顔を見せた。
「大丈夫。一応労基があるから書類上は休みで私服だけど、夜勤手当てが貰えるから。それに私だって少しは眠るわよ?用事があったら起こしてくれればいいからね」
美鶴さんはそう言って
上着を脱いだ。
「じゃ、失礼しま~す」
そしてあろうことか。
そのまま美鶴さんは
僕のベッドの、僕の隣に
横になった。
「うぇっ!?美鶴さん!?」
「私一度寝ると起きないからね~。夏樹君も体動かないから私を起こすの大変だから。こうしとけば少し強く体を揺さぶれば目覚めるでしょ?」
動かない体をわたわたと
揺らす僕の腕に絡みつき
ながら、美鶴さんは携帯を
操作し始めた。
「じゃ、取り敢えず寝ましょう。12時にアラームかけるから、それまでに何か用事があったら起こしてね」
携帯を傍らに置き
美鶴さんは目を瞑った。
「えぇ~…?」
ほどなくして聞こえ始めた
美鶴さんの規則正しい寝息
を聞きながら、僕は溜め息を
洩らす。
現在時刻は20時。
つまり、あと4時間はこの
幸せなのか不幸なのか
分からない状況の中に
居ないとならないと言う事か。
寝ようにも、なんか
美鶴さんの柔らかい
感触とか甘い匂いとかに
緊張して、眠気が襲って
来ない。
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