11人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ白な天井。
真っ白な壁。
薬品の匂いに
微かな花の香り。
僕は目を開けた。
ん?僕?
頭に浮かんだ微かな
疑問は隣から聞こえた
ガシャンという何かの
割れる音で頭の中から
かき消された。
直後に、バタバタと
慌てて走り去る足音。
「………?」
何の音だろう?
音の方向を見ようと
僕は首を動かしたの
だが、何故か動かない。
ギシギシと、良く
分からない音を立てる
だけで、首は動かない。
どころか、手や足も
同じ様に動かない。
いや、動きにくい?
動くは動くが
動きにくい
という感じだ。
無理矢理になら
動くだろう。
辛うじて動くのは
手や足の指、それから
目や唇だけだ。
取り敢えず、目だけで
周りを観察するが
やっぱり限界がある。
微かに視界に入る窓から
見えるのは、おそらく朝
なのだろう、眩い朝日。
そうこうと、周りを観察
していると、先程の何かが
割れる様な音のした方向
から、バタバタと何人もの
騒がしい足音が近付いて来た。
「本当に目覚めたのかね!?」
「はい!間違いありません!確かに目を開けていました!」
なんでそんなに慌てて
るんだろう?
何かあったのかな?
騒がしい足音は
僕の真横で止まった。
視界に、清潔そうな
白衣を纏った初老の
男性と赤十字の描かれた
三角の帽子を頭に載せた
若い女性が入ってきた。
「聞こえますかー?」
そんな耳元で叫ばな
くても聞こえてます。
そう返事をしようと
僕は口を開いた。
「………」
でも、声が出ない。
いや、出にくい。
僕は肺の中の空気
という空気を全部
吐き出す勢いで
声を出した。
でも。
「………………はぃ……」
何でだ?
僕の身体はどうなって
しまったんだ?
最初のコメントを投稿しよう!