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「綾香ちゃん!!」
伝えられた場所にたどり着くと
俺は声を張り上げながら、周辺を走り回る
どこだ!?
どこに居るんだ!?
どれだけ走り回っても
目的の人物は見当たらない
次第に息が切れ
俺は足を止めると膝に手を置き一旦呼吸を整える
「お兄ちゃん…?」
反射的に後方を振り返る
が
声の主は見当たらない
「……綾香ちゃん…?」
俺は再び体を起こすとキョロキョロと辺りを見渡してみる
「こっち…」
と
階段の裏の暗がりに小さな影を見つける
「綾香ちゃんっ!」
駆け寄ると
その衣服は乱れ、髪は無造作に絡まっていて
目は真っ赤に腫れていた
「綾香ちゃん…
本当に、本当に、これ…」
「お父さんにされた…」
綾香は俺の言葉をなぞるように頷く
その瞳はいっぱいに涙を湛え
だけど
しっかりと、俺を捉えてはなさなかった
俺はその視線に耐えられなくて
逃げるように目を背けると
歯を軋ませ、自然と拳に力が入るのがわかった
綾香の心配……と
いうよりも
自分の尊敬する心を裏切った
父さんの行動に
苛立った
軽い殺意に似た強い負の感情が沸き上がる
そして何故か、
今まで感じることはなかった
離婚や、その他の父親の犯した大小の罪への苛立ちが突然沸き上がる
ピリリッピリリッ♪
と
唐突に、その左手に握りしめていた携帯が振動する
俺はチラリと綾香に視線をおくると
「いいよ」
と
綾香は小さく呟いた
俺は携帯に目を戻すと
スライド式の携帯を開き表示されている新着メールのアイコンを開く
『その罪は罪にならない。
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”
“今すぐ参加”…』
まるで
誰かがどこかでみていたかのような
そんな絶妙なタイミング
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