第1章:セツメイショ

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「綾香ちゃん!!」 伝えられた場所にたどり着くと 俺は声を張り上げながら、周辺を走り回る どこだ!? どこに居るんだ!? どれだけ走り回っても 目的の人物は見当たらない 次第に息が切れ 俺は足を止めると膝に手を置き一旦呼吸を整える 「お兄ちゃん…?」 反射的に後方を振り返る が 声の主は見当たらない 「……綾香ちゃん…?」 俺は再び体を起こすとキョロキョロと辺りを見渡してみる 「こっち…」 と 階段の裏の暗がりに小さな影を見つける 「綾香ちゃんっ!」 駆け寄ると その衣服は乱れ、髪は無造作に絡まっていて 目は真っ赤に腫れていた 「綾香ちゃん… 本当に、本当に、これ…」 「お父さんにされた…」 綾香は俺の言葉をなぞるように頷く その瞳はいっぱいに涙を湛え だけど しっかりと、俺を捉えてはなさなかった 俺はその視線に耐えられなくて 逃げるように目を背けると 歯を軋ませ、自然と拳に力が入るのがわかった 綾香の心配……と いうよりも 自分の尊敬する心を裏切った 父さんの行動に 苛立った 軽い殺意に似た強い負の感情が沸き上がる そして何故か、 今まで感じることはなかった 離婚や、その他の父親の犯した大小の罪への苛立ちが突然沸き上がる ピリリッピリリッ♪ と 唐突に、その左手に握りしめていた携帯が振動する 俺はチラリと綾香に視線をおくると 「いいよ」 と 綾香は小さく呟いた 俺は携帯に目を戻すと スライド式の携帯を開き表示されている新着メールのアイコンを開く 『その罪は罪にならない。 “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加” “今すぐ参加”…』 まるで 誰かがどこかでみていたかのような そんな絶妙なタイミング
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