フラン×ベル

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唇に柔らかい感触。 茫然と目を丸くしてる俺に、相手は意地悪く微笑んでいた。 『な、にすんだ…!』 状況を把握すると、一気に顔が火照りだした。 オリジナルデザインのナイフを構えて相手と距離をとる。 『しょーがないですよー』 ひらひら手を振りながら、焦る様子は全くのゼロ。 『センパイが可愛いから悪いんでーす』 …かわいい? 俺が?王子であるこの俺が、女の子扱いされた? ふつふつ沸いてきてた怒りが即座に沸騰。 『っざけんな!』 力の限りナイフを投げても間の抜けた声しか返ってこない。 『やめてくださーい』 『死ね!死ね!』 『いくら優しいミーでも怒りますよー?』 一体どこが優しいというんだ。 お前なんかケダモノじゃないか! 構わずナイフを投げつけまくる。 空気を切って目標に、小気味の良い音を立て突き刺さる。 (避ければいいのに!) 『お前なんか嫌いだバーカ!』 『ミーは好きですよ』 『っ…!?』 いつの間にナイフを抜いたのか、すぐ眼前にはナイフが刺さっているどころか傷一つ付いていない蛙。 幻術か、と思うと同時に、唇にぬくもり。 『、んぅ…!』 ぬるりとした感触。 歯列をなぞられ舌を吸われる。 背筋がぞくぞくして柄も言われぬ、この感じ。 力が抜けて立ってられない。 がくん、と膝が折れて床に座り込んでしまった。 『…センパーイ、感じちゃいました?』 上からくすくすと笑い声が聞こえてくる。 むかつく、本気で。 『大好きですよー、ベルセンパイ』 赤い顔を両手で隠しても、きっと耳まで真っ赤だったに違いない。 こいつのモノになってしまうのは、そう遠くない未来かもしれない。 なんて、頭の片隅で考えていた。
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