二人のカタチ

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次の日。 教室に行くと、同じクラスの絵梨に声をかけられた。 池上絵梨(いけがみ えり)、彼女は高校の同級生でもあるけれど、そう仲がいいいわけでもないので話しかけられるなんて珍しい。「何だろう」と思っていると、彼女は少し興奮した様子で言った。 「ねえねえ、昨日一緒に帰ってた男の人って、もしかして千里の彼氏?」 優先輩と一緒に帰ってるとこ、見られてたんだ…。唯に見られるのは全然平気だけど、絵梨に見られてたのは何だか恥ずかしい。 でも、否定するわけにもいかないので、控えめにうなずいた。 「あ、う、うん…まぁ…」 「マジ~?!超カッコよくない?どこで知り合ったの?」 絵梨は、さらにたたみかけるように質問してくる。 「…友達の研究室の、先輩なんだ」 …何だか、こういう雰囲気、嫌だな…大切な物を壊されてしまいそうで… そんな私の気持ちなんておかまいなしに、さらに水谷佐和子(みずたに さわこ)と福嶋涼音(ふくしま すずね)も話に飛び込んできた。 佐和子と涼音は大学に入って同じクラスになっただけなので、絵梨以上に関わりは薄い。 ただ、彼女達が恋愛話が好きなことは知っている。 だって、しょっちゅう教室で「いい男がいない」だの、「この前の合コンはハズレだった」だのという話をしているのだから。 そんな人達に根掘り葉掘り聞かれるのは、先輩との大切な思い出を傷つけられているようで、とても切ない。
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