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「…っていうかさ、アタシもその時見てたけど、千里の彼氏ってさ…」
佐和子は少し周りを見回してから、声をひそめて言った。
「夏フェスで解散した『レオ』のボーカルの『ユウ』さんに似てない?」
「あ!それ私も思った!似てるってか、『ユウ』さん本人じゃない?化粧してないけど、あれは絶っっ対『ユウ』さんだと思う!」
涼音も突っ込んでくる。
改めて『レオ』の人気に驚かされた。
「ねぇ、千里。どうなの?」
佐和子と涼音が身を乗り出すようにして尋ねてくる。二人とも『レオ』のファンなんだろう。
こんな時適当に嘘がつけない自分を、今日ほどうらめしく思ったことはない。
『ユウ』さんなんでしょ?とせまってくる二人に思わず頷いてしまった。
「いや~っ…」
「何か…複雑…でも、ショック~…」
あからさまにがっかりする二人にはさすがの私もカチンときたけれど、何て言ったらいいかわからず、私はただ黙っていた。
そんな私の気持ちには少しも気付かず、二人はさらに突っ込んでくる。
「あの夏フェスから付き合ってるんでしょ?」
「う、うん…」
しばらく話を聞いていた絵梨がとんでもない事を言った。
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