二人のカタチ

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「でさ、千里。彼氏とはどこまでいったの?」 「どこまで」というのが場所を聞いているわけじゃないことくらい、私にもわかる。 でも…… 驚いて固まる私の様子から悟ったのか、絵梨が言った。 「もしかして…まだ、何にも?」 仕方なく、頷く。 「えぇ~っ?!だって、もう1ヶ月でしょ?何にもないなんてありえないって!」 大袈裟なくらい否定する佐和子。でも、ホントに何もないんだから仕方ない。 「そうだよ~。せめてキスの1つや2つあるのが普通じゃん?」 涼音は佐和子と「ね~」と顔を見合わせる。 ……キス…… 思ってもみなかったことだけど、「恋人」だったらそういうことがあってもおかしくないんだ…というよりむしろ付き合って1ヶ月もしたら、それはあって当たり前のことなんだ… 初めてのキスは、大学に入ってから少しの間だけ付き合った彼。お互いの唇がほんの少し触れ合う程度の軽い物だった。それでも、そういうことが初めてだったから、とても驚いたことを覚えている。 ただ、そこで私がすごくびっくりしてしまったせいか、彼はその後別れるまで本当に数えるほどしかキスをしなかった。 今思い返してみれば、その彼とのキスには甘いドキドキなんてほとんどなかったように思う。 じゃあ、優先輩とは… 考えるだけでドキドキしてしまう。 「1ヶ月も付き合っててキスもまだ、なんて遅いよ~。一緒に出掛けたりしないの?」 涼音の言葉に、「今度映画に…」と素直に答えてしまってから、しまったと思った。 「それ、チャンスじゃん!その帰りとかにそれとなく誘っちゃえばぁ?」 佐和子が即座にくいついてくる。 「そんな…」 もうやめて…!と思ったところで、彼女達を別の友達が呼びに来てくれたので、どうにか助かった…
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