二人のカタチ

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『唯、相談があるんだけど、今日のお昼いいかな?』 『いいよ!何かあったの?』 唯からの返事はすぐ返ってきた。 短い文の中から私を気遣ってくれる気持ちがひしひしと感じられて嬉しい。 『うん…ちょっと。後で話すね。場所はいつものとこで。ありがと』 『了解~♪講義終わったら行くね』 唯の返事が表示された画面が涙でにじむ。 心の中で唯にお礼を言いながら、大きく深呼吸をする。 優先輩にも、連絡入れなくちゃ。 『今日は唯とお昼を食べることになったので、ごめんなさい(:_;)また、帰りに研究室寄りますね』 申し訳ないと思いつつ、送信する。 …いつもはすぐに返事が来るのに、今日は返事が来ない… 先輩、怒っちゃったのかな…と不安になる。 だめだめ、悪いほうに考えすぎだよ。先輩だって忙しいんだから、と自分に言い聞かせてみるものの、不安は消えない。 「はい、講義を始めますよ」 教授が入ってきて講義が始まる。私の苦手な英語だ…気が重い。 「では、今日は62ページから。じゃあ、訳してもらいましょうか。そうだなぁ…」 教授が名簿を見て指名する生徒を考えている。みんなの思いは同じ。 私じゃありませんように… 「では…高橋さん。高橋千里さん」 …ツイてない… うまくいかない日っていうのは何もかもうまくいかないもんだよね…と心の中で言ってみる。 「高橋さん?いませんか?」 「あっ、は、はい」 「はい、訳して下さい」 「えっと…」 しどろもどろではあったが、何とか指定された所を訳すことができた。 終わってしまえばこっちのもの。この時間はもう指名されることはないだろう。 ホッとしていると、マナーモードにしている携帯が振動した。
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