二人のカタチ

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そして、あんなにあれこれ話し合った割には「恋人」と「友達」の違いはあいまいなままで、解決するには至らなかった。 もやもやした想いを抱えたまま、研究室に着いた。閉まっているドアの向こうから楽しそうな話し声が聞こえてくる。 コンコン。 「ど~ぞ~」 答えたのは獅堂先輩だった。 「失礼しま~す」 「おっ、ちさちゃんに唯ちゃん。ダンナのお迎えか?」 ニヤニヤしながら言う獅堂先輩。この人はいつもこんな感じだ。 「ダンナって…」 言いかけた唯の言葉をさえぎって森本君が言う。 「先輩~、未来のダンナではあるけど、まだ正式にはダンナにはなってないッスよ。照れるなぁ」 だはは、と照れ笑いをする森本君。 …でも、その手にトランプが握られていることに、私は気付いてしまった。 隣を見ると、唯も気付いたようで、私が止める間もなく森本君のほうへ歩み寄った。 その唯の表情に悪い予感を感じたのか、森本君が慌ててトランプを背中に隠す。 「あ、これは…」 「森本っ!!宿題やるって言ってたでしょ!」 「…ゴメンなさい」 うなだれる森本君を見て、獅堂先輩がぷっと吹き出す。 「なんだよ、モリ。唯ちゃん彼女っていうよりお母さんみたいだな~」 そんな獅堂先輩の言葉を無視して唯はさらに言う。 「その宿題終わんなかったら旅行行けないんだから!」
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