二人のカタチ

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「唯がね、私達のことを羨ましい、って言うんですよ」 「羨ましい?」 いつものように先輩と一緒に帰りながら、私はあの疑問を先輩にぶつけてみることにした。 「そう。「恋人」っぽくて羨ましい、って言うんですよ」 「だって、春野さんとモリだって恋人でしょう?」 「でもね、唯は自分達は「友達」っぽい、って言うんです」 「友達ねぇ…」と先輩は呟く。 あの質問をしたら、先輩はどう答えるのだろう?半分ドキドキしながら、私はあの質問を先輩にぶつけてみた。 「先輩、「恋人」と「友達」の違いって何だと思います?」 「「恋人」と「友達」の違い、かぁ…そうだなぁ…」 先輩はしばらく空を眺めて考えた後、あくまで僕はこう思う、ってだけだけど…と前置きをしてから話してくれた。 「僕にとっては「恋人」も「友達」も、どっちも大切な人。だけど違うのは、「恋人」は誰よりも幸せにしてあげたいと思う人。自分の全てをかけて、僕が、幸せにしてあげたいと思う。「友達」には幸せになってほしいけど、そこまでは思えないかな」 僕が、幸せにしてあげたい… それって、私を、だよね… そう考えたら幸せすぎて胸が苦しくなる。 「千里さん…」 呼ばれて見上げると、先輩の優しい眼差しに捕らえられた。 「先輩…」 「だからね、僕は、千里さんを幸せにしたいと思ってる…」 「……」 真剣すぎる熱い眼差しに、何も言えない。 言葉につまる私に、ふわっと微笑むと、先輩は私の頭を撫でてくれた。 頭に触れる先輩の大きな手…それだけでもドキドキしてしまう。
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