二人のカタチ

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いつものように、アパートの前まで送ってもらってサヨナラする。 先輩が角を曲がって見えなくなるまで、私はその背中を見送る。わかってはいるけれど、この時はいつも寂しい。でも、それを知ってか先輩はいつも角を曲がる前に振り返って、私に手を振ってくれる。たったそれだけだけど、心がほっこり温かくなって、幸せだなぁと思える。 先輩は、「自分の全てをかけて幸せにしたい」と言ってくれたけど、私は先輩が一緒にいてくれるというだけで十分幸せで、私こそ先輩を幸せにしてあげられてるんだろうかと心配になる。 だから、その夜私は先輩にメールした。 『いつも家まで送ってくれて、ありがとです。私はこうやって先輩と一緒にいられるだけですっごい幸せです☆ …でも、こんなこと聞くのもナンですが、私は先輩のこと、幸せにできてますか? こうしてほしい、っていうのがあったら言って下さいね』 ちょっと大胆だったかな…と思いながら、思い切ってえいっと送信ボタンを押した。 30分くらいして、先輩からメールが返ってくる。 いつものことだけど、ドキドキしながらメールを開く。 『そう思ってくれてたんだ。嬉しいよ。僕も千里さんと一緒にいるだけで幸せだよ。 でも1つだけ、お願いしようかな? 今度の土曜、一緒に映画を見に行ってくれる?』
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