其ノ壱-斬れぬ輩を斬れる者-

5/8
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
沖田の向かいに座っている、まだあどけなさが残っている少年がゆっくり口を開いた。 「あ…うん。僕の話もだいたい永倉さんと同じなんだけど…」 この少年、藤堂平助は目を伏せた。 「そいつ、たしかに僕が昔切ったやつだった」 その言葉に、皆は目を見開いた。 「おいおい嘘だろ!?そんなありえない話があるか!?」 原田がたまらず叫ぶ。 「これが本当だとしたら、かなり厄介だな…」 土方が顔をしかめる。 沖田は、ちらりと横目で自分の横に座る近藤の顔を見た。 見るからに悲しそうな、辛そうな顔だった。 沖田は、ちくりと胸が痛む気がした。 近藤は、この話が進むにつれて、目に見えて暗い表情になって言った。 いつもの明るく優しい表情は影もない。 沖田は、唇をきつく噛んだ。 大好きな近藤さんの笑顔を奪うやつは許せない。 近藤さんを苦しめるやつは、悲しませるやつは許せない。 この体も、刀も、魂も全て近藤さんに捧げると誓ったから。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!