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時刻は十時を迎えようとしている。そろそろ眠ってもいいだろう。
ということで、弘樹は電灯を消してベッドに入った。
そして目を閉じると一日の疲れの残りが出て、静かな寝息が部屋の中に響いた……。
その頃、勉学に励んだアリスは喉の渇きを感じて台所に向かっていた。
階段を下りて廊下を歩いていると、なにやら、妙な空気の流れを感じる。
「あれ? これって……魔力?」
どこからか魔力が漏れ出しているのを感じたアリスは、感覚を研ぎ澄まして辿っていくと、父の私室の前にたどり着いた。
別に不思議ではない。アルビオンはこの部屋で研究をしていたので、魔力があるのは当然といえよう。
だがこの魔力は少し違った。
「随分と新鮮な魔力ね。何かあるのかも……」
父の部屋の扉を開けると、綺麗に掃除された書斎が広がっている。
散らかっていた魔術書はアリスが回収したので今は普通の本しかないが、やはり魔力の出所はこの部屋のようだ。
さらに神経を研ぎ澄まして魔力の流れを感じ取りながらゆっくりと歩くと、ほぼ部屋の中央で立ち止まった。
「足元……かな?」
目線を足元の絨毯に向けるが、実際に絨毯を剥がして調べる気にはならなかった。
そもそも妙なはなしである。
今まで何度も父の部屋に入ってきたが、こんな魔力の漏れなど感じたことはない。
――義兄さんと一緒の方がいいかもしれないわね。
魔力の出所はつかめたので、アリスはオレンジジュースを飲んで歯を磨いた後に眠った。
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