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「……さん! 義兄さん!」
「――?」
目を開けると、アリスが不機嫌な顔で弘樹を見下ろしていた。
カーテンが全開になった窓から眩しい朝日が差し込んで部屋を明るく照らしている。
「……夢か」
「あ、やっと起きた。もう朝だよ。早く起きて、朝ごはんを食べて」
「了解。ありがとう」
上体を起こして目を擦り、寝巻きから着替えて朝食を食べに階段を下りた。
今日は日曜日。道場での稽古の予定も入っていないので休日だ。
食後の緑茶を啜りながら今日一日を如何様に過ごすか考えていると、アリスが話があるので廊下に出て欲しいといわれ、彼女に従って廊下に出た。
「どうした?」
「実は――」
弘樹はアリスから父の部屋のことを聞き、すぐに彼女と一緒に父の部屋に向かった。
魔力の流れを弘樹は感じることは出来ないが、父の部屋というだけで何かおかしな気配がしてならない。
彼女の指示に従って絨毯を取り除くと、なぜか地下へ続く隠し階段があった。
何でこんなものがあるのかと驚いていると、アリス曰く、英国近辺の住宅では地下室を作るのはごく一般的で、英国生まれのアルビオンからすれば至極当然のことだったのだろうと推測されるとのこと。
地下室へ続く階段はとても暗かったのでライターで照らし、石階段を下っていく。
かつては腕から炎を出していた弘樹もライターの明かりで安心するようになり、複雑な心境になりながら地下室へ辿り着いた。
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