第1章 巡る運命

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「もう! 男らしくないわね! 消えてしまった恋人さんのためにも、世界のために働いたらどうなのよ! そんな女々しい姿を見て、天国の恋人さんが喜ぶとでも思っているの!? シャキッとしなさいよ!」 「…………」 「ちょっと、何か言ってよ。私がいじめているみたいじゃない」 「違うのか?」 「違うわよ! もう……」 「ぷっ! あははは! 悪かった。確かに、アリスの言うとおりだ。ここにキヌアがいたら……きっと俺を叱っていただろうな。よし! アリス! 着替えの支度を頼む。俺は道場と門下生に連絡する!」 「え? あ、はい!」  突然指示されたアリスは慌てふためきながら部屋を出て行き、弘樹は気合を入れなおして立ち上がり、携帯電話を開いて道場や門下生たちに事情が出来たので暫く道場を休む旨を伝えていく。  門下生の中には不満を言う者もいたが、最終的には納得したので後顧の憂いは無くなった。  アリスがせっせと準備を進めている間に、弘樹は地下室へ戻ってネリーフィスを呼び出す。 「随分とお早い決断ですね。正直、もう二晩はかかるかと思いましたが」 「義妹に叱咤されたんでね。きっとキヌアも……同じ事を言ったはずだ。今回は義妹も一緒だけど、支障は無いね?」 「はい。ですが、支障を感じるのは貴方自身かもしれません。ともあれ、感謝します」 「……親父が始めたことだから、俺に回ってくるのは当然なのかもしれない。ところでギルドたちは元気?」 「はい。ヒロキさんと同じように、少しだけ歳を取りました。きっと彼らも助力してくれることでしょう。具体的な出発は何時になりますか?」 「そうだな……明日の朝にしよう。一応、ミオに伝えておいてくれ。どうせ、大神殿に着くのだろうし」 「ふふ、分かりました。彼女も喜ぶことでしょう。では、お待ちしております」  彼女の気配が消え、アリスも準備が出来たというので、後は母に言うだけだ。  向こうの世界に行くことを告げたのは夕食のとき。母は特に驚くこともなく、好きにするのが安藤家の流儀だ、とだけ言って微笑んだ。
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