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冷たい石の床……新鮮な空気……。
弘樹は起き上がって周囲を見回すと、そこは蒼い壁に包まれた殺風景な空間で、後ろには一点の曇りも無い『次元の鏡』が祀られている。
思い切り息を吸い込むと、とても爽やかな気分になった。
すると背後から誰かの視線を感じる……。
もしやと思って振り返ると、鏡の陰に小さな男の子が隠れてこちらを見ていた。
「隠れていないで、出て来いよ」
腕を伸ばしながら弘樹が呼びかけると、男の子は恐る恐る鏡の陰から出てきた。
とても綺麗な灰色の目をしている。年齢は、五歳くらいだろうか。
「お、お兄ちゃんたち……だぁれ?」
「ただの旅人だよ。どうしてそんなところに? 参拝なら、あっちの礼拝堂だろ?」
「ここ、僕のお気に入りだから。でも見つかったらママに怒られるから、黙っていてね」
「ああ。だが、ここにいたらいずれ見つかるぞ? お母さんのところに戻ったほうがいいと思うが?」
「あら、もう見つけてしまったわ」
「っ!」
男の子と話していると、また背後から声が聞こえた。
穏やかで、とても懐かしい女性の声色に弘樹はハッとそちらを向くと、長い銀の髪を揺らす白銀の巫女が色違いの両目で弘樹たちを見ている。
大人びた雰囲気は相変わらずだが、体は年相応の成長を遂げていた。
「ミオ……」
「お久しぶりね。とても懐かしいわ」
と、ミオは言いながら笑顔になる。以前からは考えられないほどに朗らかな笑みで、思わず弘樹は見とれてしまった。
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