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「こら。ここに入ってはいけないと言ったでしょう?」
「ご、ごめんなさい……ママ」
「え!? お母さんってミオのことだったのか?」
「そうよ。まあ、詳しい話は礼拝堂でしましょう。ところで、そちらの人は?」
ミオの視線が床で気を失っているアリスに向く。
「義妹だよ。最近、うちに来たんだ。その辺りも話そう」
アリスを背負った弘樹はミオに続いて鏡の間を出ると、礼拝堂の方から子供たちのにぎやかな声が聞こえてくる。
「ずいぶんと子供たちが参拝に来ているんだな」
「違うわ。あの子たちは、みんな私の子よ?」
「……早く説明が聞きたくなった」
礼拝堂に出ると三十人ほどの少年少女たちが遊んでおり、ミオと見知らぬ弘樹とアリスの姿を見つけると、みな、輝くような笑顔で彼らを取り巻いた。
「お母さん! おやつまだ~?」
「あれ? お客さんだ! いらっしゃい!」
「こんにちは~!」
などなど、四方八方からさまざまな声が聞こえてくるので、いったい誰に反応すればいいのか分からずに弘樹は困惑する。
「はいはい。お客さんが困っているから、道をあけてちょうだい。それから、お茶の支度をして」
『は~い!』
子供たちは一斉にそこから散っていき、礼拝堂のイスに座った弘樹は一息つく。
「凄いな。いったい、何がどうなっているのやら……」
「驚くのも無理は無いわ。実はね、この大神殿は孤児院も兼ねているの。私や貴方が戦った『第二次明暗戦争』の戦争孤児を私が引き取ったの」
「なるほど。しかし、すっかり人嫌いが克服できたようで安心したよ」
「……そうね。人間、変われば変わるものだわ。だけど貴方は、あまり変わっていないみたいだけど」
談話が弾んでいると、子供たちが紅茶と菓子を運んできた。
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