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「大丈夫。俺も初めて会ったときは学ランだった。ついでに、アリスに王都を案内しよう。特に変わったところが無ければ、だけど」
「心配ないわ。あの決戦の傷跡は少しあるけど、今までとそれほど変わっていないから。強いて言えば……ふふ、まあ行けば分かるわ」
意味深な笑みを浮かべたミオは、他の部屋で眠っている幼少の子にミルクをあげる時間だと言って退席し、弘樹とアリスも神殿から出て雪銀城へ向かう。
神殿を覆う森を抜けて丘まで出た。眼下には、人々で賑わう赤レンガの都が広がっている。
「うわぁ……すごく綺麗……」
「これが王都カルリースだ。シクルス王は、あの岩山の頂上に住んでいる。その前に都を歩き回ってみよう。俺も久しぶりだから見ておきたい」
丘から降りた二人は大通りを歩く。あの戦いから三年……都は一つも変わった様子が無い。
行き交う人々は全員笑顔で、西側の港からは威勢のいい声が聞こえ、さらに客寄せの声も聞こえてくる。
船も何隻か停泊しているようだ。
どこに何があるのかをアリスに説明していた弘樹は、不意に、大通りの中央にある十字路を見た。
そこには多くの人だかりが出来ており、一体何事かと思って近づいてみて弘樹は絶句する。
なぜなら、道路の中央には自身とそっくりな銅像が出来上がっているではないか。
しかも銅像の土台には、ハッキリと自身の名前が書かれている。
右手に剣を持ち、左手から炎が噴き出ている時点でまさかとは思ったが、あまりの恥ずかしさに思わず目を逸らした弘樹。
だがアリスの目に入ってしまった。
「あれって、もしかして義兄――」
「しっ! 騒ぎになるのは御免だ。行くぞ」
「むごむご!」
アリスの口を手で押さえて弘樹はその場を去った。西の港と市場を巡り、ブレスト帝国から輸入された果物ポルクを齧りながらレストラン通りを過ぎ、いよいよ雪銀城の岩山の麓まで来た。
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