1022人が本棚に入れています
本棚に追加
崩れていた魔法陣の祠も修復されており、そこから一気に城の正門まで飛ぶ。
純白の城はとても静かで、その美しい姿は何度見ても溜息が出る。
特にはじめて見るアリスは目を輝かせており、暫く城を眺めた後に正門を開けてもらって中に入った。
城の内部も全く変わっていない。
廊下を歩き、階段を上っていると、畳まれたシーツを抱えて上階から下りてくる少女が一人。
「あ…………ヒロキ、さま?」
下りてきたのはメイドのヘレンだった。弘樹がいたことに驚いたのか危うくシーツを落としかけており、すぐに弘樹と同じ場所まで移動して深々と頭を下げる。
「お久しぶりでございます」
「久しぶり。元気だった?」
「はい。恐れ多くも、今はメイド長として働いております」
「へぇ! 出世したのか! ヘレンは頑張り屋だからな」
「いえ……そんな。ところで、そちらの御方は……」
「義妹のアリスです。よろしく、ヘレンさん」
「妹君様でございましたか。よろしくお願い致します」
丁寧に深々とお辞儀をするヘレンを見たアリスの脳裏には、英国で財界相手に腕を振るっている執事エリックを思い浮かべていた。
久方ぶりなのでゆっくりと話したかったが、今はシクルス王への挨拶の方が先なのでヘレンと別れ、玉座の間の手前まで移動する。
すると扉が内側から開かれて、小さな鼻眼鏡が特徴的な白い宰相が現れた。
「久方ぶりですね。ヒロキさん」
「メイスさん! お元気そうで何よりです」
「そちらも健やかなようで安心しました。しかも、なんとも可愛らしい女性まで連れて。ふふふ、隅に置けませんね」
「ただの義妹です!」
アリスが声を上げてメイスは愉快に笑い、程々で自らの名を名乗る。
最初のコメントを投稿しよう!