第2章 英雄の帰還

7/16
前へ
/261ページ
次へ
「私はフィン・シャロンリード卿メイスと申します。カルナイン王国の宰相を務めております」 「さ、宰相閣下!? 私は、アリス・ラインハルトといいます」  目の前にいる男性が王国で二番目に偉い人だと知ったアリスは驚いたが、すぐに財閥のお嬢様の品格を取り戻し、優雅に一礼しながら返事をした。 「メイスさん、俺たちのことは……ミオから?」 「はい。昨晩叩き起こされました。さて、それでは国王陛下がお待ちですので」  翻る白いマントに続いて弘樹とアリスは赤絨毯の上を歩き、絢爛な装飾が施された玉座の前に跪く。  やがて玉座の脇の通路から小さな足音が近づいてきた。  衣服の擦れる音が玉座の辺りから聞こえ、凛とした爽やかな声が発せられる。 「二人とも、面を上げよ。僕に礼は不要だ」  顔を上げると、玉座には頬まで伸びた金色の髪が滑らかな美青年が腰掛けている。  大きすぎた王冠もぴったりと頭に被り、白い縁の青いマントと服を着る国王シクルス・アルスリンド・イグドラシルは、幼げなど消え失せ。すっかり王者の風格を備えた姿になっていた。 「シクルス……声変わりした?」 「うん。本当に懐かしい気持ちで一杯だ。メイスから聞いたときは驚いたけど、こうして顔を合わせると嬉しい。義妹さんもよく来られたね。ようこそ、カルナイン王国へ。民を代表し、歓迎申し上げる。僕が国王のシクルス・アルスリンド・イグドラシルだ」 「お、お会いできて光栄です! アリス・ラインハルトといいます」 「よろしく。さあ、こんなところで厳かに話すのも息苦しいだろうから、僕の私室で話そう。メイスも参加してほしい。それから、ヴェルディン将軍も呼ぼう」 「畏まりました」
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1022人が本棚に入れています
本棚に追加