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従者が裏門で瞑想しているであろう黒剣士を呼びに行き、その間に国王の私室に移動した弘樹たちは、来客用のソファーに腰掛けて、メイドが運んできた茶と菓子を頂く。
「それにしても……大きくなったなぁ、シクルスは。体も雰囲気もすっかり王様じゃないか」
「色々あったからね。ヒロキが帰った後、王国の復旧や戦後処理で凄く忙しくて、ようやく安定を取り戻したところだよ。家族を失った者は多い。特に、一家の主人が兵士で戦死した家庭への援助などもあったから、少し国の財政が厳しくて……まあ、他の二国も同じような状況だから、互いに支援しあっているというのが現状かな」
「それもこれも、陛下のご人徳ゆえですよ」
「メイスの話術のおかげだよ。外交は殆どメイスに任せていたから……」
彼らの会話を聞くだけで、あれからどれほど苦心したかが理解できる。
それから、弘樹が帰ってからの話とアリスの紹介が続き、唐突に扉が開いて漆黒の鎧とマントを纏う剣士が部屋に入ってきた。
その腰には、今もなお、青紫の柄の銘刀『月牙』が佩かれている。
「来たぞ。何用――」
「お久しぶりです、師匠」
弘樹が立ち上がって礼をすると、ヴェルディンは眉をピクリと動かして呼び出された理由を把握する。
「戻っていたのか。久方ぶりだな」
「はい。お元気そうで安心しました」
「ふっ、お前に案じられていたとは……後で裏門に来い。腕前をみてやる」
「お願いします」
面子も揃ったということで、弘樹はこの世界に戻ってきた理由と謎の勢力についての情報を求めた。シクルスら三人は何か話し合った後に返答する。
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