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復興の兆しが見え始めた頃、帝都の郊外を歩いていた弘樹とアリスの前に、父アルビオンが現れた。
「お父様!?」
いきなり父が目の前に現れたものだから、アリスが口を押さえて吃驚している。
アルビオンは膝を叩いて爆笑した。
「はっはっは……あぁ、おかしい。大きくなったなぁ、アリス。パパは嬉しいぞ!」
「パパって……どうして連絡もくれなかったのよ! 大変だったんだから!」
「すま~ん。宇宙を感じられる場所を探していてなぁ」
「何よそれ!」
「と、いうのは冗談で……実はな、ずっと光の世界にいたんだ。ネリーフィスだけでは、どうにも頼りなくてなぁ。他の守護者たちに指示を下したのは、実は私なのだよ」
「何よそれ……人が必死になって旅をしていたのに。ねえ、義兄さんも何か言ってよ」
「まあ、親父だから仕方ない」
「うむ。仕方ないのだ。アリス、可愛いぞ」
「誤魔化さないでよ! ところで、あの湖に紅い宝石が落ちていたのだけど……あれってお父様の仕業?」
「いや、あれはただの宝石だ。思い込みというのは凄いものだな。あれに魔力は籠っていない。全ては、アリスの力だ」
「……なによ、散々文句を言ってやろうと思っていたのに!」
怒っているようだが、実のところ、顔は笑っていた。
何用かと弘樹が聞くと、父はアリスを迎えに来たと言う。
今までほったらかしにしていた分、帰りくらいは共に、とアルビオンは提案したが、アリスはそれを断った。
「ぐぬぅ……これが反抗期というものかっ!」
「違うわよ。だって、出来ることなら皆に見送られて帰りたいもの。だから、落ち着いたら、神殿の鏡から帰るわ」
「そうか。仲間、か。いいものだな。久しぶりに、イギリスの屋敷へ戻ってみるか。お母さんの墓参りも、しないとな」
「うん。そうして。お母様も、エリックも喜ぶと思う」
「あの石頭は苦手だ。ふふふ、ははは! では、先に戻るぞ。弘樹……しっかりと、な」
「ああ。父さんも、あまり無茶をしないように」
「ふん、約束はしないぞ?」
意地悪な笑みを浮かべて、父は魔法陣の中へ消えてしまった。
やはりどこか変わっているが、憎めない父に弘樹とアリスは微笑を浮かべた。
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