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そして迎えたアリスの帰郷の日。カルナイン王国の大神殿の鏡の間には、弘樹たちを始めとした七人の仲間が集まっている。
「じゃあ、私は……これで。ナイト、また、来るからね」
「うん。いつでも歓迎するよ」
「義兄さんも、頑張ってね」
「ああ。母さんによろしく」
「わかった。あれ……おかしいな? 涙が出てきちゃった」
拭っても次から次へ流れ出す真珠の如き涙。
仲間との別れ、義兄との別れ、恋人との別れ……様々な思いが、彼女の胸に押し迫る。
ごしごしと手の甲で涙を拭き払い、アリスは鏡に魔力を送って扉を開いた。
「さようなら。ごきげんよう!」
光の彼方へアリスが消えた。
場所は変わり、静かな礼拝堂の中に深い安堵のため息が響く。
「ふぅ……今度は、見送る側になったか」
「でも、本当によかったんですか? ヒロキさんも、向こうの世界が故郷なのに」
「なんだ? 帰って欲しいのか?」
「ふぇ!? そ、そういう意味じゃ……あぅ、えっと……」
「はっはっは! まったく、愉快なコンビだぜ! さてと、オレたちも在るべき場所に戻るとするかぁ。はぁ……子育て地獄が待ってるぜ……」
「嘆かないの! じゃあ、みんな元気でね! また会おうね!」
「はい! ギルドさんも、ルピスさんも、お元気で!」
ギルドとルピスが海へ向かって飛び去った。
「よし、それじゃあ僕も自分の世界に戻ろうかな」
「ナイト、これから闇の世界はどうなるんだ?」
「光との調和がとれた今、闇も変わるさ。これからは、闇の民も地上で生きることができる。それが堪らなく嬉しい。もう二度と、光と闇が敵対しないように、僕も頑張るよ」
自信に満ちた笑みが何とも頼もしく、闇の王は黒い霧に包まれてそこから消えた。
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