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靴を履いていると、メイド服が玄関まで出てきた。
「お気をつけてください、染矢さん」
「見送りなんかいらない」
メイド服はほぼ90度頭を下げると、そのまま動かない。
俺は溜め息をつきながら、玄関を出た。
通学路を歩く。
学校に近付くにつれ、渋滞がひどくなる。
渋滞を引き起こしている高級車から、俺と同じ制服が下りて来る。
三年生が卒業したから、これでも少なくなった方だ。
歩道には、俺と同じように徒歩で通学しているやつも多い。
学校の近くに住んでいるやつらだ。
「あの、すみません」
数人の女の子が俺の前に群がった。
「なに?」
必然的に足を止める。
「あの。染矢真紅さんですよね?」
「そうだけど」
女の子達はお互い小突きあってもじもじしている。
「あの、あたし達、今度、洋芳学園に入学するんです」
「おめでとう」
この続きは読める。
俺は女の子達から離れて歩き出した。
「あ、あの…」
「俺は君達が入学しても覚えないし、好きだって言われても迷惑だから」
女の子達の顔が曇り、唖然としたまま立ちつくす。
「俺、性格も女癖も最悪だから」
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