5441人が本棚に入れています
本棚に追加
洋芳学園では、恒例の卒業式演劇が行われていた。
卒業式の直後、一年生、二年生の演劇部員が、三年生のリクエストを演じるものだ。
今年はロミオとジュリエット。つまらない、くだらない三文芝居だ。
たかが十代の火遊びが、時代を超えて演じられるのが信じられない。
今、ロミオを演じている俺が言うのもおかしいか。
芝居は進む。
そして、終わる。
拍手が起こる。
しつこいほど鳴りやまない。
ステージから降りても賛辞の言葉が掛けられる。
感謝の言葉を述べるが、俺にとって何の意味もない。ただの流れ作業のことだ。
「君、ロミオやってた染矢真紅君だよね? 僕、C&Yプロダクションの三浦って言うんだけど…」
「芸能界とか興味ないので。さようなら」
名刺も受け取らず、目も合わさず着替えに向かう。
あっさり無視されたスカウトマンは突っ立ったまま。
俺は染矢真紅。洋芳学園の二年生で、来月からは三年になる。
この学園はかなりの金持ち校で、授業料もかなり高い。
俺の父親は建築家で、海外の仕事がメイン。海外に行ってもう三年もたつ。
最初のコメントを投稿しよう!