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ふと、隣で眠る顔に目をやる。
さっきよりは寝息が穏やかになってきた気がするな。顔色も幾分マシだろう。
粒になった汗を拭ってやりながら、その寝顔を眺める。
するとふいに乾いたその口が、何の前触れなくぱかりと開いた。
そして何をいうかと思えば、
「………死ね臨也」
と、まあ何とも鮮明に紡がれた言葉に、ひくり、と口元が引き攣るのが分かった。
「…譫言にしたって気に食わないなあ、」
呟きながら実はタヌキなんじゃないのかと頬を掴み上げると、憎らしい程カタチの良い眉を寄せながら小さく唸る。
ただ不思議と嫌な感じはしなかった。
相手が病人だからか、はたまたただの気の迷いかまでは分からないが。
「…黙ってれば、可愛いのにね」
誰に言うでもなく一人小さく呟くと、汗で顔に張り付いた髪をそっと軽く払ってやると、
閉じられた瞼が、微かに震えた気がした。
慣れない看病疲れからか、いつの間にかそこで寝入ってしまった俺が、目覚めたシズちゃんにぶん殴られるまで、
あとほんの、数時間。
H21.10.04
過去ログ。昔の文だと更に更に意味が不明。
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