動きだす…

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 ダクトを進んで10数分後、終に3階の男子トイレに到着した匠祐。金網を確認すると、ポケットからさっきのドライバーを取り出した。  「ここをこうして…」  匠祐は小さく呟きながらドライバーを引っ張った。すると、ドライバーのシャフト部分がずれた。シャフトが畳まれ、関節のようなものが二つ現れる。その部分を曲げると、カチリ、と音がしてその部分が90度で固定された。持ち手を回すと、反対を向いたプラス型の先がくるくると回転した。  玲也にはお世話になりっぱなしだな。  金網の隙間からドライバーの先を差し込み、四隅にあるねじを器用に取り外していく。  さて、こっからは慎重に行かないとな…。  取り外した網をダクト内に立てかけ、体を個室の中に滑り込ませる。扉を開け、静かにトイレの外に顔を出した。警備員どころか職員が全く見当たらない。  これはラッキーだな。ただ、監視カメラの数がすごいな…。これはさて、どうしたものか。……一瞬だけ隠せば気付かれないだろ。ウン。大丈夫だ。多分。  一応、折りたたみ式のお面を着けた。ちなみにこれも玲也お手製で、変身ヒーローのデザインをしている。監視カメラを一瞬だけ目隠しし、その間に通り抜けるという手法を続けていると、更衣室に行き当たった。鍵も掛かっていない部屋の中に入ると、ここもやはり1人もいない。  いや~、警備が手薄でありがたいよ。ウン。と言うよりも監視カメラの数に安心しちゃってるのかな?  早速物色を開始する匠祐。できるだけサイズの小さい警備員の服を探して服の上から着る。更に、シフトカードも見つかった。  これで交代時間も分かるな…。  服は案の定ぶかぶかだったが、帽子を目深に被れば監視カメラに映っても怪しまれない。3階の地図があったのでメモに書き写し、そこに書いてあった監視室へと向かった。  監視室に入ると目の前の椅子に背中を向けて座っている人物が見えた。しかし、その人物はよほど疲れていたのか、椅子に深く腰掛けて寝息を立てていた。  ありゃ? 寝てる? またラッキーだ。  監視室から4階の地図を見つけた。そこには目的の絵の在り処と注意書きが書いてあった。  <!4階の警備は正社員が行うこと!>  うへぇ…ここにきて壁だ。  とりあえず地図を写し、<特別展示室>というキーホルダーがつけられた鍵を拝借して部屋を出た。
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