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とある美術館の奥の奥、<特別展示室>というプレートが貼られた部屋。
その中に、1枚の絵がある。
『月下の少女の憂い』
その題が付けられた絵は左上に真っ白な満月が描かれ、その白に負けないような純白のワンピースを着た少女が、白い服と対比するような暗い表情で描かれていた。
今にも涙が溢れてきそうな眼、透き通るような白い肌。閉じられた唇、すぅっと通った鼻筋。腰まであるだろうかという黒髪は、風に吹かれて後ろになびいている。
まるでその少女がそこにいるような、そんな気を起こさせる繊細なタッチが印象的だ。
この絵は、近頃脚光を浴びるようになった近藤 雷智の作品である。
人目に触れるのは1ヶ月に1回。
それ以外のときは暗い、特別展示室に押し込まれている。
光を浴びることのない、暗い、暗い、部屋に……
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