動きだす…

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 駅を出てすぐに右に折れ、そのまま坂を下っていく。  坂を下り切ってから左に曲がって、そのまま真っ直ぐに歩いていくと、突き当たりに<顕隆大学>という看板が貼り付けられた建物が見える。まるで森を切り開いて作ったように思わせるほど、キャンパスの周りは木が生い茂っていた。  キャンパスの内部は車が通る道以外は全て芝生になっている。校門から赤いレンガの壁が、森の侵食を食い止めるようにキャンパスの周りに延び、車が一度に5台は通れようかというほど広い門の両脇には、小さな警備員室がそれぞれあった。スライド式の門が、今はレンガの壁の影に隠れるようにして納められている。  キャンパスの中に足を踏み入れると、芝生が足の音を吸い込み、それと同時に心地よい感触が伝わってくる。  校舎を見上げると大きなガラス張りの入り口の上は3階よりも上階に当たる部分が無く、淡い水色の空が見える。中央に空いたスペースの代わりに校舎の両側から四角い5階建ての部分が突き出ていた。  目線を元に戻してから左――西側を見ると、校舎の1階部分から屋根が延び、明るい色をした平屋の食堂に繋がっていた。  顔を逆方向の東側に向けると、大学がサークルなどに貸し出している2階建ての横に長い建物が見えた。この建物にも校舎から屋根が繋がっていた。上空から全体を見ると綺麗にコの字型になっているつくりだ。  右手に持った鞄を肩に乗せ、真っ直ぐに正面の入り口に向けて足を進める。  校舎の中に入り、正面の階段を上る。  3階まで登ったところで左に曲がる。  他の学生とすれ違うが、大体が違う学部の奴らだ。挨拶をするのは相手が俺に興味を持って話しかけてきたときだけ。それ以外のときはただの障害物だ。何でかって言うと、ほぼ全員俺より身長が高いからだ。玲也なんて俺の頭があいつの肩だ。伸びる伸びるなんて言われ続けてきたけど結局160センチいかずに止まっちまった。  ため息を吐きながら東棟の最上階まで登り、その更に奥の部屋へと足を向ける。  扉の鍵を開けて中に入った。
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