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「そんなこと言われてもしょうがねぇだろ? お前が調べたときには2階までしか載ってなかったんだから」
さっきまでとは打って変わって明るい声だった。いつもの調子だ。
「だからハッキングしようとしたらお前が止めたんだろ?」
「もし跡が残ったら警戒が強くなるだろ? それに必ずあるって保障もないし」
「あそこは最近できたばっかりだから絶対管理用のパソコンに見取り図が入ってるって」
俺は諭すように言う。
「新しいからセキュリティも厳しいんじゃないのか?」
「それはそうだけどな、俺のテクなめんなよ」
「なめてない。でも慎重にしなくちゃダメなんだ。俺たちは捕まっちゃいけない」
そう言った匠祐の淡い水色の目からはまた、強い思いが感じられた。俺は諦めて、ため息をつきながら椅子の背に体を預けた。
「分かったよ。でも、じゃあなんでいつもあのメモを残すんだ?」
「ん~……自己顕示欲…かな?」
腕を組んで天井を見つめながら匠祐が言った。
「そういえば下見まだだったな。早く行ってこいよ」
「あ」
「ん?どした?」
匠祐が何かを思い出したように俺の顔を見て言った。
「入場料400円くれ」
「それぐらい自分で払え」
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