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とある美術館…
よし。ここだ。
匠祐は心の中で確認して、美術館の受付に向かった。
受付に座る若い女性がこちらに向かってくるのを確認して微笑みかける。
「大人1人」
女性は少し面食らった表情で券を机の下から取り出した。その表情を匠祐は見逃せなかった。
俺は中学生か……。
匠祐は財布から400円を取り出してトレーに置いた。
「はい、どうぞ。ごゆっくりお楽しみください」
女性の微笑みは、すでに無意味だった。匠祐は券とパンフレットを受け取り、ため息を吐きながら美術館の中に入った。
パンフレットに載せられた地図には、やはり2階部分までしかないのを館内を歩き回りながら確認した。
「やっぱり入るしかないか…」
と小声で呟いて立ち止まった。
「さて、こっから入れるかな…?」
匠祐はトイレの中にいた。目的はもちろん用を足すためではない。3階への侵入経路を探しているのだ。
「ダクトとかあればなぁ……」
そう言いながら天井を確認する。
「あ、あった」
個室の上にひとつずつ換気扇のような金網があり、簡単なねじ止めが施されている。
これじゃ開けてくれって言ってるようなもんじゃないか。
幸いトイレの中には匠祐以外誰もいない。個室に入り鍵を掛ける。薄手の手袋を着け、便器に立ってダクトを開けようとするが、届かない。
これだから身長が低いのいやなんだよ……。
「はぁ~」
ため息を吐いて個室の端にある扉を開け、脚立を取り出す。個室に戻り、便器にまたがるような位置に脚立を立てる。上から2段目に立ち、ダクトの四隅に付いているねじをポケットから取り出した、少し長いドライバーで外しにかかる。
ねじを全て外し、金網が自由になったところでそれをダクトの内側にどけ、体を滑り込ませる。
さてと、上に行くのは左だったな。
2階の展示室で立ち入り禁止の札が貼られた扉のあった方向を確認し、ダクトの中を四つん這いになって進んでいく。
しばらく行くとダクトが垂直に上に曲がっていた。匠祐は両手両足を壁に付け、そのまま登っていった。
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