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ふたりが夫婦(めおと)となることを、むらびとたちは、ごく自然に受けとめた。異存があるはずもない。いくら美しいからといって、異界から訪れた、母の腹を裂いて産まれ出た異能者を、嫁に迎えたいというむらびとはいない。
わかは、もともとはむらびとである。しかし、さかいの小屋に暮らし、ぢぢとばば、そしてひめと、同じものを食い、おなじ役目にあずかってきた以上、むらびとたちから見れば、すでにさかいの住人である。それに、わかにとっても、ひめは、ともに育った家族同然の幼馴染である。
そして、ひめを見守るわかの瞳をみつけて、ひめが屈託のない美しいほほえみを見せるとき、その笑顔があの日のひめの母の顔と重なり、わかは
――あの日、自分はひめにとらわれたのかもしれない。いや、自分は、ひめを託されたのだ。
と思う。
わかとひめは、あらたな「さかいの者」として、むらを癒し続けた。
やがて、奇妙なことが生じた。はじめは、なんということもない出来事だったのだが…。
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