第4章

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 男は家には戻らず、そのまま、むらおさの屋敷の門を叩いた。使いが村を走り、明け方でありながら、寄り合いが召集された。  男はむらびとたちに告げた。  ――ひめは、錦を織ってなどいない。    あの女は人ではない。あれは人外のものだ。    おれは見た。    あれは錦を・・・錦を産み落としていたのだ。    おれは、たしかに見た。    あれは、人ではない。  寄り合いは、長くはかからなかった。  ――今夜のうちに、ことを決すべし。  その夜、松明(たいまつ)と得物(えもの)を手にしたむらびとたちは、里を出てさかいの小屋を囲んだ。  わかが戻ってくるのは明日あたりだ。今夜のうちに…。  前夜と同じ、月のない闇夜の丘を、強い西風が駆け抜け、松明が燃え上がった。
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