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男は家には戻らず、そのまま、むらおさの屋敷の門を叩いた。使いが村を走り、明け方でありながら、寄り合いが召集された。
男はむらびとたちに告げた。
――ひめは、錦を織ってなどいない。
あの女は人ではない。あれは人外のものだ。
おれは見た。
あれは錦を・・・錦を産み落としていたのだ。
おれは、たしかに見た。
あれは、人ではない。
寄り合いは、長くはかからなかった。
――今夜のうちに、ことを決すべし。
その夜、松明(たいまつ)と得物(えもの)を手にしたむらびとたちは、里を出てさかいの小屋を囲んだ。
わかが戻ってくるのは明日あたりだ。今夜のうちに…。
前夜と同じ、月のない闇夜の丘を、強い西風が駆け抜け、松明が燃え上がった。
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