第5章

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 さかいの丘にたどり着いたわかが目にしたのは、いまだにくすぶり続ける焼け落ちた小屋の残骸。踏み荒らされたあたりの様子や、そこここに投げ捨てられた松明(たいまつ)と得物(えもの)が、小屋を焼いたのが他ならぬむらびとたちであることを示している。  ――いったいなぜ?    何があった?  わかは、まだかすかに煙をのぼらせている小屋の焼け跡に踏み行って、焦げて倒れた柱をどけ、燃え残った板をはがし、ひめを捜した。  ――ひめは? ひめは、どこだ? ひめは、無事か?  ふと手をとめたわかの耳に、かすかに、細いすすり泣く声が聞こえた。  ひめだ。  わかは、すすり泣く声をたよりに、小屋があった丘から川に向かって降りたあたりの草むらに駆け込んだ。  草むらに、ひめは、ひっそりとその傷ついた身体を横たえて泣いていた。
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