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少女の身体はすっかり冷え切っており、息も弱く、もはや自分の命を保つのが精いっぱいで、子を産む力など残っていない。いや、おなかの子にしても、このままでは母親のおなかの中で死んでしまうだろう。
彼らは決断を迫られた。少女の意思を確かめねばならない。ぢぢは、少女の耳元に語りかけた。
――このままでは、おまえさまも、ややも助からぬ。
ややを助ければ、おまえさまは助からぬ。
おまえさまを助ければ、ややは助からぬ。
少女は、ゆっくりと目を開けた。その目が、かたわらでふるえているぼうの瞳を見つけた。少女はほほえみ、ぼうの瞳をとらえたまま、こたえた。
――ややを。
そして目を閉じた。
手術が行われた。
母の血の海の中で、赤子は産声をあげた。
女の子だった。
母親は、小屋の近くに丁寧に埋葬された。
女の子はぢぢとばば、そしてぼうに見守られて成長した。
むらびとたちは、いつしか、その美しい娘を「さかいのひめ」と呼ぶようになった。
そして、若者に成長したぼうは「さかいのわか」と呼ばれている。
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