2人が本棚に入れています
本棚に追加
ぢぢは死に、ばばも逝こうとしている。
病を癒し、むらびとたちの健やかな暮らしを護(まも)ってきたさかいの者といえども、定められた命の炎を徒(いたずら)に接(つ)ぐ術を持つわけではない。また、そのような術を求めることは戒められてもきた。この世の命の嵩(かさ)は定められており、それらをさばくことは人の手に余る業(わざ)だから。ただ、人は、命を接ぐことはかなわなくとも、まっとうした命の志を継ぐことはできる。
しかし、ばばを看取りながら、旅立つばばを、わかは心安んじて見送ることができない。
――ばば。逝くな。
俺は、ぢぢやばばのわざを、まだ学び終えていない。
俺は、まだまだ未熟すぎる。
俺は、まだ、ぢぢとばばの後を継ぐことができぬ。
ばばは言う。
――ひめがおる。
ひめの力が、おまえを助ける。
案ずることはない。
最初のコメントを投稿しよう!