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じっさい、ひめ――この異界からもたらされた娘――には不可思議な力があった。
ひめが、むらびとたちを、直(じか)に癒したことは一度もない。
しかし、たとえば、ひめは、ごく幼いころから野辺に出て、あるいは森に入り、ぢぢやばばでさえ探すのに難儀するような薬草を摘んで来た。また、ひめの周りでは、木々はその枝をぞんぶんに張り、草ぐさは生い茂り、咲き乱れる花々はいつでもひめをとり囲んだ。作物の出来が悪かったり、病に冒されたときには、ひめは里に出て田畑を癒した。そのおかげで、ここ幾年の間、むらは不作や飢饉に悩まされることがなかった。
ひめは、木々や草花を癒す。
ひめは、田畑の実りを護る。
――ひめの力には、もしかしたら、
ぢぢやわしのわざをはるかに超える値があるやもしれぬ。
ひめとともに、さかいのわざを継げ。
ばばは旅立った。
そして、ばばが言い遺したとおり、わかとひめは夫婦(めおと)となった。
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