第2章

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 じっさい、ひめ――この異界からもたらされた娘――には不可思議な力があった。  ひめが、むらびとたちを、直(じか)に癒したことは一度もない。  しかし、たとえば、ひめは、ごく幼いころから野辺に出て、あるいは森に入り、ぢぢやばばでさえ探すのに難儀するような薬草を摘んで来た。また、ひめの周りでは、木々はその枝をぞんぶんに張り、草ぐさは生い茂り、咲き乱れる花々はいつでもひめをとり囲んだ。作物の出来が悪かったり、病に冒されたときには、ひめは里に出て田畑を癒した。そのおかげで、ここ幾年の間、むらは不作や飢饉に悩まされることがなかった。  ひめは、木々や草花を癒す。  ひめは、田畑の実りを護る。  ――ひめの力には、もしかしたら、  ぢぢやわしのわざをはるかに超える値があるやもしれぬ。  ひめとともに、さかいのわざを継げ。  ばばは旅立った。  そして、ばばが言い遺したとおり、わかとひめは夫婦(めおと)となった。
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