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「お姉、一局打とうよ」
命はランドセルからマグネット状の碁盤を取り出す。
「夕飯が出来たらね」
そう言うと、殊美はみじん切りしている玉葱に視線を戻す。
命はわざとらしく頬を膨らませ、一人で盤に今日の対局を並べていた。
「というか、父さんと母さんは?」
命は小さなマグネットの盤上に、一人手に石を並べていく。
「また入院だってさ」
殊美の言葉には、明らかなため息が混じっていた。
あぁ、命は事を察した。
そして、殊美のその溜め息が諦めを含んだそれであることも、なんとなく理解する。
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