ふたりの軌跡

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今日、その碁会所は珍しく賑わっていた。 それは、一人の場違いな少女の存在。 町によっては、囲碁を好む人が集う碁会所と言う施設がある。 そういった施設に出入りする人は、大抵高齢であり、年相応の経験者である。 「70、75、79目…!」 煙草の煙が蔓延したその碁会所で、煙たそうにしながら地を数えているのは、まだ年端も行かぬ、幼い少女だった。 「70、78…。あぁ、一目足りんかったか! いやぁ、上達が早いなぁ命ちゃんは!」 命と呼ばれた、まだ幼い少女の対局していたお爺さんは、大きく口を開けて、豪快に笑った。
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