葵とキミ

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「今日も雨かぁ」 教室の窓から空を見上げ、葵はつぶやく。 梅雨に入り、毎日のように雨が降っている。 雨が降ると、テニスコートが使えないので、練習は必然的に室内になる。 室内練習と言っても、もちろん体育館に室内用のテニスコートがあるわけではなく基本的には体力をつけるためのトレーニングである。 まずは、校舎の階段を1階から4階まで走って10往復。 5分休憩を入れながら3セット。 次は廊下を使って、腕立て伏せ、腹筋、それぞれ50回。 2人二組になって、1人が相手の足を持ち、もう1人は足をもたれたまま、手を使って廊下の端から端まで歩く。 歩くというか、手だけで動く。 トカゲの足をもたれた状態だ。 これが、かなりキツイ。 タダでさえ、階段往復をやって、足はガクガクで倒れそうなのに、今度は手まで使えなくなりそうなほどだ。 休憩をして、今度は逆立ち。 テニスは手の筋力をかなり使うスポーツなので、手を鍛えることは重要なのだ。 分かってはいるが、かなりキツイ練習内容なので、早く晴れて欲しくて仕方がない。 ここ10日ほど雨が続いており、毎日室内トレーニングなのだ。 「こんなんじゃ、どんなに炎天下でも球拾いしてた方が楽だ。」 真白も泣きそうに言う。 「ホントホント。いつになったら私たち、ラケットもってテニスが出来るんだろうね」 「3年生が引退したあとだろうね」 引退。 夏休み入ってすぐの中体連を終えたら3年生は引退する。 そうなれば、さすがに1年生の葵たちでもラケットを持つことが出来るだろう。 「それまでガンバルしかないね」 葵は、真白を励ますように言う。 「うん。梅雨もいつまでも続く訳じゃないし。 がんばろう」 そういって、2人は部活へと向かった。
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