875人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、瑠依は笑顔でフランスへと旅立って行った。
葵も最後まで笑顔で瑠依を見送った。
淋しくないと言ったら嘘になる。
でも、葵は泣かなかった。
瑠依には笑顔の自分を覚えていてほしかったから。
結局、葵の気持ちは言葉で瑠依に伝えることは出来なかった。
でも、あの時、あの瞬間。
2人は間違いなく同じ気持ちだったと信じている。
言葉にしなくても葵の気持ちは伝わった。
そして、瑠依の気持ちも。
言葉なんていらない。
言葉よりも大切なものを瑠依からたくさんもらった。
葵は飛行機が飛び立つのを、ずっと見つめていた。
この空はフランスまで、続いている。
―行ってらっしゃい。
葵は瑠依からもらったパスケースを握りしめ、いつまでも青空を見上げていた。
最初のコメントを投稿しよう!