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葵は必死になってパスケースを探す。
ホームに続く階段を降りるとベンチのそばにパスケースを見つけた。
「あった」
葵は嬉しくて駆け寄った。
「あ。」
葵が拾う前に誰かがパスケースを拾い上げた。
見上げると、爽やかな雰囲気の男の人がパスケースを見つめていた。
「あの・・・。」
葵が声をかけた。
「え?」
男の人は不思議そうな顔をして葵を見たが、葵がパスケースを見つめているのに気がつき目を細めた。
「あぁ。これ、君の?」
そう言って葵にパスケースを差し出した。
「ありがとうございます。」
葵はお礼を言ってパスケースを受け取った。
「もう落とさないように気をつけてな。」
男の人はそう言って、去っていった。
「良かった。見つかって」
葵はパスケースを大事そうに握りしめた。
(もう絶対に落とさない)
葵は駅を出て大学にに向かった。
通り道に公園があり桜がキレイに咲いている。
「わぁ。もう満開だぁ」
葵は足を止めて桜を見上げた。
―初めて瑠依に会ったのも桜の下だったよなぁ。
葵は瑠依と出逢った日のことを思い出していた。
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