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葵は教室に戻り席に着いた。
入学したばかりなので座席も出席番号順だ。
葵は廊下側の窓から2列目の一番前だ。
「席も一番前なんて最悪。」
葵はそう言ってクラスを見渡した。
真白は「藤村」なので、葵と席が離れている。
葵が見ていることに気付き、真白が手を振ってくる。
葵も笑顔で手を振り返す。
担任の話も終わり、帰り支度をしていたら後ろの席の石川美沙に声をかけられた。
「ねぇねぇ。」
「え?」
「入学式の時、瑠依くんと話してたでしょ?
良いなぁ。何話してたの?」
人なつっこい顔で美沙が言う。
「瑠依くん?」
葵が聞き返す。
「そう瑠依くん。
入学式で秋村さんの隣に座ってた7組の男の子。」
「あぁ。」
あいつ瑠依って言うんだ。
葵は先ほどの入学式を思い出していた。
「そう。麻岡瑠依くん。
彼、頭も良いし、スポーツ万能で緑ヶ丘小の人気者だったののよ。
サッカー一筋でめちゃくちゃモテるんだけど、誰の告白も断っててさ。
でも、硬派ってわけじゃなくて、女の子には優しくて遊んでくれるし、男友達も多いし、すごいカッコイんだから。」
美沙は興奮したように話す。
「へぇ、あいつがね。」
―ってか、緑ヶ丘小ってもう告白とかしてるんだぁ。
葵の通っていた桜ヶ丘小は男子も女子も仲は良かったが、友達感覚で恋愛感情とはちょっと違っていた。
少なくとも、葵はそうだった。
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