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公園の桜は満開に咲き乱れ、風に吹かれて花びらが舞っている。
「桜吹雪だね」
桜を見つめ葵が言う。
「ホント。
これから散っちゃうなんて、もったいないよね」
風に舞う花びらを見上げて、淋しそうに真白が言う。
「ホント」
葵は手に取った花びらを見ながら、今朝瑠依が立っていた桜の方を見る。
今はお花見らしき親子連れがベンチに座っているだけだ。
葵は入学式で瑠依から、もらった、とゆうか拾った花びらのことを思い出した。
スカートのポケットを探ってみる。
あの時、慌ててスカートのポケットに入れたままだった。
ポケットに入れられていた花びらは少ししおれている。
ポケットから取り出し、手のひらに乗せた瞬間。
花びらは風に舞って、他の花びらと一緒に飛んでいった。
葵はしばらく桜を見上げていた。
「行こう」
真白に言われ、葵は家に向かって歩き出した。
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