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「失礼します。」
職員室に入り、葵は顧問の大友先生の所へ向かう。
大友先生は、今の2年生の担任でもある。
部活の時は厳しいが、普段は優しい。
まだ30代半ばくらいだろう。
本人はいつ聞いても二十歳と言い張っている。
いつもジャージ姿の憎めない先生だ。
「先生。戸締まり完了です。」
そう言って、葵は大友先生に鍵を渡す。
「おう。ご苦労さん。気をつけて帰れよ。」
鍵を受けとり大友先生が言う。
「はい。さようなら~。」
そう言って、葵は職員室を出た。
「うわっ。」
職員室のドアを開けた瞬間、誰かにぶつかりそうになり、葵は思わず声をあげる。
見覚えのある顔がそこにあった。
「あ。ごめんなさい。」
葵は思わず謝った。
「いや」
そういって、彼は職員室に入っていく。
「先生。鍵締め完了 。」
「おう。ご苦労さん。」
そんなやりとりが聞こえてくる。
ー麻岡瑠依だ。
葵はそっと呟く。
入学式の日。
葵に桜の花びらをくれた。
確か、サッカー部だっけ?
葵はクラスメートの石川が嬉しそうに瑠依の話をしていたのを思い出す。
あいつも鍵締め当番かな?
そんなことを思いながら、葵は真白の待つ下駄箱へと歩いていった。
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