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「やっぱり、死ぬ・・・・・。」
休憩になり、葵たちは水飲み場に向かっていた。
水飲み場は1年生の校舎の下駄箱と、体育館の前にある。
葵たちは1年生の校舎と体育館の間にある、2,3年生の校舎で練習をしている。
水飲み場までの距離はどちらも変わらないが、体育館の水飲み場の方が水が冷たたいためそちらに向かっていた。
「雨も上がったね」
外を見て葵は言う。
「うん。このまま降らないでいてくれれば、明日にはコートも使えるかもね。」
真白も空を見上げる。
階段を下りて、職員室前を通り、体育館に繋がる渡り廊下に出たときに、悲鳴にも似た声が聞こえたので、葵は驚いて、声のした方を見た。
「麻岡君だ・・・・」
「え?」
声の主は、同じテニス部の平田夏だ。
葵は夏の視線を追った。
視線の先には、麻岡瑠依がいる。
サッカー部も休憩なのか、4,5人で水を飲んでいる。
「ヤバイ。かっこいい。」
夏はじっと瑠依を見ている。
どうやら、先程聞こえた悲鳴のような声は、夏が瑠依を見つけて叫んだ喜びの声だったようだ。
「夏って、もしかしてあいつのこと好きなの?」
葵は夏に向かって言う。
「え?いや。好きって言うか、もう憧れみたいなもん。
だって、すっごくかっこ良くない?
緑ケ丘小にあんなにかっこいい人がいたなんて。
ホントうらやましすぎるよ。」
夏は葵と同じ桜ヶ丘小出身だ。
今は確か瑠依と同じクラスのはずだ。
「そう?あのくらいなら桜ヶ丘小にもいたんじゃない?」
葵が言う。
「は?葵、あんたの目腐ってる」
「・・・」
「たしかに、桜ヶ丘小にもかっこ良い子はいたけど、あんなにクールで大人っぽい人はいない。
クールだけど優しい。
サッカーもうまいし、頭も良いし。かっこ良いし。
言うことないよ。
葵も同じクラスで、話してみると彼の魅力がわかるはずよ」
夏の勢いに葵は思わず後ずさりをしてしまう。
「・・・・・」
「何を言っても無駄だよ」
真白が葵をみて言う。
「うん。人の恋路は邪魔しないことにしよう」
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